度々ニュースなどで話題になるゴミ屋敷。その原因は様々で、精神的・身体的な原因や、ゴミ出し時間に出すことができないといった環境による原因などが挙げられます。
この中でも身体的原因である場合、片付けたくてもそれが困難であるため支援が必要であり、その場合専門処理業者の依頼も考えなくてはなりません。
今回はゴミ屋敷で困っている方に向けた支援も含め、自治体で制定している条例や対策など詳しく解説していきます。
ゴミ屋敷条例とは?生活環境の問題解消に対応する制度・支援
まず、ゴミ屋敷を解消するための法律は、憲法で知的財産権が守られているため存在しません。なぜならば、周りから見てごみであっても、その人から見れば財産であるためです。
そのため、近隣住民など他人が片付けることは法律違反になってしまいます。また、警察に通報したとしても違法ではないため注意ぐらいしかできないのが現状です。
しかし、放置することもできないため、「不良な生活環境」としてゴミ屋敷に関する条例の制定や解消するための制度・支援を行っている自治体が増えてきました。以下よりその自治体が制定したいわゆる「ごみ屋敷条例」について詳しく紹介します。
ゴミ屋敷に関する条例
ゴミ屋敷を法律で対処することはできませんが、大量の廃棄物から発生する悪臭による地域の住環境悪化、台風などによるごみの飛散、火災リスクなど問題も多いため放置はできません。
そのためゴミ屋敷対策を念頭に置く条例として平成20年12月、日本初のごみ屋敷条例となる「荒川区良好な生活環境の確保に関する条例」の制定を皮切りに各自治体で制定するところが増えてきました。
また、条例の中には北九州市に代表されるような一つの条例の中にゴミ屋敷対策の内容が盛り込まれているケースもあります。まずはその条例に該当するゴミ屋敷について解説します。
ゴミ屋敷とは
そもそも条例でゴミ屋敷といったワードは使用されることがありません。多くの条例ではゴミ屋敷ではなく「不良な生活環境」や「不良な状態」と記述されています。
そのため、ゴミ屋敷のみではなく、空き家や草刈りなど管理がされておらず雑草が生え放題になっているような空き地も対象になってきます。
しかし、どのレベルがその条例でいうところの「不良な生活環境」や「不良な状態」に該当するのか基準はなく、自治体によってそのいわゆる「ごみ屋敷」に対する定義はまちまちです。
また、よくある記載として堆積という用語が用いられており、そこでは「ごみ」といった表現ではなく「物品」としていることも多くあります。その理由としては周囲から見てごみであっても、住人にとっては財産や資源であると主張されることが多いため配慮された結果ともいえます。
どの自治体の条例も一見分かりにくい表現であるため、いわゆる「ごみ屋敷条例」と言い換えられています。
その条例内容については様々で注意レベルの軽いものから、支援や対策が盛り込まれているもの、強制力の強い行政代執行を含むものなどがあります。その執行方法については以下の通りです。
行政代執行
行政代執行とは読んで字のごとく、対象となる不良な生活環境、いわゆる「ごみ屋敷」の住人に代わって行政が執行するものになります。
ただし、すぐに執行されるものではなく、市役所などからゴミ屋敷の住人に対して指導や勧告、命令などを再三に渡って行った上で改善されない時の最終手段となります。
その執行した際のごみ屋敷から出る廃棄物処理費用などについては後日住民に請求され、納付がない場合は強制徴収できると定められています。
罰則
自治体の中には命令に従わないゴミ屋敷の住人に対して罰則を規定しているところもあります。そのほとんどが過料によるものになります。
支援
条例の中に支援を盛り込んだ自治体も増えてきました。ゴミ屋敷片付けのために人手を集めて協力してくれたり、費用を補助してくれるなどといった内容が条例に盛り込まれているところが多いようです。
自治体が行っているゴミ屋敷対策・防止方法を紹介
条例で定義されている不良な生活環境、いわゆる「ごみ屋敷」。
指導や勧告に対して了承をしたものの、高齢による身体機能の低下などから自身で解決することが困難な場合や、精神的な疾患など心に問題がある場合、ゴミ屋敷片付けにかかる費用など自治体によっては支援をしているところもあります。
その内容をいくつか紹介します。
ごみ1キロ当たり13円で処分を支援ー横浜市
神奈川県横浜市では、ごみなどによる「不良な生活環境」の解消・発生防止を図るため、役所と関係機関、地域住民が協力して本人に寄り添った支援を行うとしています。
最終手段としての行政代執行の措置はありますが、基本的には支援によっての解決を目指しています。主な活動としては以下の通りです。
- 調査:物をため込んだ本人の親族関係や福祉サービスの利用状況調査
- ごみの排出支援:近隣の生活環境が損なわれ、本人は同意しているものの自ら片付けられない場合のゴミ屋敷片付け・排出支援
排出支援に関しては、別の条例で定められた一般廃棄物の処理手数料(1キロ当たり13円)が適用されます。
横浜市に限らず、このごみの排出支援についてはゴミ屋敷対策の一つとして取り入れられている自治体が増えてきています。
横浜市ホームページ
https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/fukushi-kaigo/chiikifukushi/yashiki/g-project.html
ごみ出しが困難な方に「ふれあい収集」ー所沢市
いわゆる「ごみ屋敷条例」とは別で、埼玉県所沢市では一般ごみを集積所に出すことが困難な人のために、週に一度、市職員が自宅まで訪問して玄関先でごみを収集する「ふれあい収集」というサービスを実施しています。
ゴミ屋敷になってしまう原因の一つとして高齢化に伴う身体機能の低下があるため防止につながっています。また、ごみが玄関先に出ていない場合は声掛けも行っているため、利用者の安否確認にもつながっています。
このごみ収集サービスは、ごみ屋敷の防止だけでなく孤独死予防の観点もあり、所沢市だけでなく全国の自治体で徐々に実施されてきているサービスの一つです。
所沢市ホームページ
https://www.city.tokorozawa.saitama.jp/kurashi/gomi/gomishusekijo/haitai_20081031182825106.html
福祉面の支援からアプローチー京都市
いわゆる「ごみ屋敷条例」の所管は、ほとんどの自治体ではごみを担当する環境部ですが、京都市では人の問題として捉え、福祉面からアプローチするために保健福祉局が条例の所管となっています。
そのため、ごみ屋敷条例の内容は似ていても、活動内容は他の自治体と比較して「人」への支援が強化されているのが特徴です。
その内容は、市職員や保健師の訪問から始まり、清掃支援を行うとともに各種の福祉施策などの利用につなげ、清掃後もごみ屋敷の原因となる不良な生活環境へ戻らないように見守りの体制を構築されるようになってます。
他の自治体でもゴミ屋敷になる原因を人として捉え、いわゆる「ごみ屋敷条例」を制定するだけでなく、福祉に力を入れているところが増えてきました。
京都市条例
https://www.city.kyoto.lg.jp/hokenfukushi/cmsfiles/contents/0000201/201229/honbun.pdf
まとめ:ゴミ問題に困ったら自治体窓口に相談してみよう
ゴミ屋敷問題は近隣住民にとってはとても深刻な問題ですが、本人にとっても深刻な問題です。
自治体ではその不良な生活環境、いわゆるごみ屋敷として条例や様々な取り組みがされているため、相談することで解決に導いてくれます。
また、自治体での回収が難しい家電リサイクル対象品目のエアコン・テレビ・冷凍庫・冷蔵庫・洗濯機・衣類乾燥機については業者による回収となり費用が発生してしまうため、使用できるものはリサイクルショップの利用もおすすめです。
ゴミ屋敷の解決は、心の問題である場合も多く、業者を使って急いで片付けてしまっても再発するリスクがあります。自治体や地域住民など、多くの人が支えながら時間をかけてゴミ屋敷は解決していくのがベストです。
たとえゴミ屋敷に対する条例がなかったとしても、自治体によってゴミ屋敷に対して何かしらの対応をしてくれることも多いはずです。ゴミ屋敷の困った悩みは、まず自治体の相談をおすすめします。