「ごみ屋敷問題は自分に関係ない」と考えている人が多いですが、決してそんなことはありません。
マンションの隣の部屋や隣家がゴミ屋敷になることもありますし、何かをきっかけに自分の部屋や実家が片付けられずにゴミ屋敷になることもあるのです。
そこで今回は、ごみ屋敷の原因と対策方法を解説します。ゴミ屋敷にならないためにはどうすればいいのか、もしごみ屋敷になった場合はどのように手順で対策すればいいのか、しっかりチェックしていきましょう。
この記事は、次のような人におすすめの内容です。
- ごみ屋敷になる原因が知りたい人
- 自分でできるゴミ屋敷対策が気になる人
- 実家のゴミ屋敷対策を考えている人
なぜ発生する?ごみを片付けられない原因とは
ごみを片付けずに長期間放置するといわゆるごみ屋敷になりますが、そもそもなぜごみを片付けられないのでしょうか。
ごみ屋敷の対策方法を解説する前に、片付けられない問題の原因を押さえておきましょう。
- 高齢
- 激務
- 障害
- 心理・精神的な病気
高齢
高齢になると目が見えなくなったり、体を動かせなくなったりなどするため、だんだんと日々の生活ですら簡単に送れなくなります。
高齢化によって掃除をする体力やごみを処分する筋力が亡くなっていくことがゴミ屋敷になる原因です。
また、歳を取ると脳の判断能力も落ちていくので、ごみの回収日を忘れたり、ごみの分別ができなくなったりもします。そもそも何がごみなのかも分からなくなる場合もあるのです。
高齢化が加速する日本では、ごみ屋敷への早急な対策方法の提示が求められています。
激務
毎日仕事に追われている社会人は部屋を片付ける時間がまともに取れず、ごみ屋敷対策ができないことが多いです。
「ゴミ屋敷対策ができていない=低収入」というイメージを持っている人が多いですが、ゴミ屋敷対策の実現に収入の高さはまったく関係ありません。
低収入の人は毎日働かなければ生きていけないため家を片付ける時間がないことがありますが、高収入でも激務であれば部屋のごみ対策をする時間は皆無でしょう。
障害
もともと障害を持っている人だけでなく、体調不良や交通事故などが原因で後天的に身体障害を抱えた場合にごみ対策ができずに、部屋がゴミ屋敷化することも多いです。
例えば、交通事故で足を骨折すると、治療が終わるまでごみを回収日に出すことが難しくなります。
周囲のサポートがあれば部屋を掃除してもらえますが、何かしらの障害を持っていると食事や日用品などのごみがどんどん部屋にたまってしまいます。
心理・精神的な病気
心理的・精神的な原因で、ごみに対する適切な対策ができなくなるケースもめずらしくありません。例えば、近年のごみ屋敷の原因で多い心理・精神的な病気としてセルフネグレクトがあります。
セルフネグレクトとは、人生における何らかのきっかけが原因となって、自分自身に興味が持てなくなる心理・精神的な病気のことです。
自分の身なりや周囲に意識を向けることが億劫になり、簡単な片付けやごみ出しができずに部屋がゴミ屋敷になるのです。
セルフネグレクトに限らず、心理・精神的な病気が原因で片付けができずにゴミ屋敷化した場合は、病気の治療をしなければ根本的な対策が実現できないので注意が必要です。
ゴミ屋敷が招く問題や被害
マンションの部屋や実家のゴミ屋敷対策ができないと、さまざまな問題や被害が発生します。
悪臭が発生する
ごみを片付けずに長期間放置すると、悪臭が発生します。例えば、野菜や果物の生ごみやお弁当のプラスチック容器ごみなどを何の対策もせずに、部屋に放置すれば腐敗が進むことは周知の事実でしょう。
悪臭が発生し始めたときはゴミ屋敷の住人も気付くでしょうが、どのように片付けをすればいいか分からず放置をするケースも多いです。
そのうちに悪臭に鼻が慣れて、ゴミ屋敷の環境が異常だと感じなくなっていく場合も珍しくありません。
ゴミ屋敷の中にごみが収まっていれば悪臭の影響を受けるのは本人だけですが、庭や道路、周辺の空き地にまでごみが散乱すると隣家にも被害が及びます。
害虫・害獣問題になる
たくさんのごみを部屋の中に放置したまま片付けずにいると、ノミやダニ、ゴキブリなどの害虫やネズミなどの害獣が発生します。
害虫や害獣がゴミ屋敷に一度住みつくと、徹底的に対策しなければ問題は解決しないので注意が必要です。なぜなら、害虫や害獣は想像以上の速度で繁殖し、驚くべき生命力を持っているからです。
ゴミ屋敷に住む人も害虫や害獣が発生すると、部屋の環境が悪くなります。「なぜ片付けや駆除対策をしないのだろう」と不思議に思う人がいるかもしれませんが、大量のゴキブリやネズミの適切な処理方法を知っていますか?
知っていたとしても、自分一人で対策できない人が大半でしょう。そもそも、ゴミ屋敷対策ができない人は片付けが苦手なことが多いので、こうなると部屋の環境を元に戻すのは絶望的だと考えられます。
健康被害が出る
長期間片付けをしていない衛生状態が悪い環境の部屋で生活していると、住人の健康状態が悪化します。
例えば、ノミやダニが原因で肌のかゆみや湿疹が出たり、大量のほこりで呼吸器官に影響が出たりする可能性があります。その他、害虫や害獣の影響で食中毒などの感染症になったり、アレルギーや喘息を引き起こしたりすることもあるのできちんとした片付け対策が必要です。
とは言え、健康被害が出るほどのゴミ屋敷になった場合は、自分で部屋を片付けるのは難しいです。早めに行政や専門業者に相談・依頼することが大切になります。
近隣住民とトラブルになる
ゴミ屋敷を片づけたり、専門機関に相談したり、対策したりしなければ、やがて部屋から大量のごみが溢れ出て周囲の環境を悪化させます。
悪臭が隣家に漂い、害虫や害獣などが部屋で発生していることが近所の人にバレるのも時間の問題です。
ゴミ屋敷問題は部屋の住人だけでなく、隣家の住民にとっても大きな問題なのでトラブルに発展する事例も多いです。
ゴミ屋敷に住む人の中には、自分の部屋がゴミ屋敷だと認識していない人もいるので、近隣住民と口論になることも度々あります。
ちなみに、隣家や近くの空き地がゴミ屋敷になっていても、持ち主に許可を得られなければ現状の法案では対策できません。
ゴミ屋敷の持ち主にいくら言っても対策してもらえない場合は、大きなトラブルになる前に管轄の自治体・行政や専門業者に相談・依頼することをおすすめします。
火災が発生することもある
ゴミ屋敷の中は燃えやすいものがたくさんあるので、少しでも火の気があれば大きな火災に発展することがあります。
住人が吸おうとしたタバコやコンロの火などが原因で片付けていないごみに燃えうつって火事になる場合もありますし、ゴミ屋敷対策をしないことで揉めた住人に火をつけられる可能性も否めません。
一度火災が発生すれば取り返しがつかない事態になるので、適切なゴミ屋敷対策を実施することが大切です。
自分でできる片付け対策
自分のマンションの部屋をゴミ屋敷にしないためには、日ごろから適切な片付け対策をすることが大切です。
自分自身でできるごみの片付け対策としては、次のようなものがあります。
- いらないものをすぐに捨てる癖をつける
- ものをしまう場所を決める
- 専門業者に依頼して片付けの仕組みづくりをする
以上が自分でできる片付け対策のコツです。3つのポイントについて、もう少し詳しく解説します。
いらないものをすぐに捨てる癖をつける
自分の生活に今すぐ必要ないものは、すぐに捨てる癖をつけると自然に部屋が片付けられます。
例えば、段ボールや包装紙、紙袋などはいつでも手に入るので、捨てるのがもったいないと考える前に処分することのがおすすめです。
いらないもので部屋が溢れていると、必要なものが分からなくなる傾向があります。必要なものを大切にするためにも、不要なものはその場で捨てて片付けることがゴミ屋敷対策に繋がるのです。
ものをしまう場所を決める
ものの定位置を決めて片付ける方法は、ゴミ屋敷対策に有効です。ものを片付ける位置が決まっていれば、「収納場所がもので溢れる=不要なものが多い」と判断できます。
気付かない間に同じものをいくつも買ってしまう人にもおすすめの対策です。
専門業者に依頼して片付けの仕組みづくりをする
部屋を片づける仕組みづくりが苦手な人は、専門業者に依頼して片付け対策をしてもらうのもひとつの方法です。
ある程度の費用はかかりますが、専門業者に片付けの対策方法を教えてもらえば自分に合ったゴミ屋敷対策が分かります。
ただし、専門業者に片付けを依頼するだけでは、根本的なゴミ屋敷対策にはなりません。どのように片付ければゴミ屋敷対策ができるのか、担当者と話をすることが大切です。
自治体・行政が行っているゴミ屋敷対策や条例
自治体や行政によっては、ゴミ屋敷対策のために条例を制定していることがあります。
全国各地の自治体でゴミ屋敷対策に関する条例が設定されているわけではありませんが、今回は実際に存在する条例を紹介します。
今回は神奈川県横須賀市の「ゴミ屋敷の解決・予防の条例」の内容を見ていきましょう。
横須賀市のゴミ屋敷対策のための条例には、次の4つのルールが設定されています。
ゴミ屋敷対策の条例項目 | ゴミ屋敷対策の条例内容 |
---|---|
調査 | ゴミ屋敷に住む人や部屋の 状況を調査する |
福祉的な支援 | 保健師やケースワーカーが ゴミ屋敷を訪問して 住人の片付けの対策・支援をする |
ごみの排出支援 | ゴミ屋敷の住人が片付けに 同意し、自分で処理するのが 難しい場合に市がごみの排出 支援をする |
措置 | ゴミ屋敷の住人が市の 支援に応じない場合は、 指導・警告後に強制的にごみの 片付けをして対策する |
横須賀市のゴミ屋敷対策の特徴は、住人を全面的に支援しようとするところにあります。
保健師やケースワーカーなどがゴミ屋敷の住人と接することで、その人にあったゴミ屋敷対策ができるのです。ゴミ屋敷の原状回復だけでなく、再発防止対策にも繋がるのが特徴です。
ゴミ屋敷の住人を最初から悪人と決めつけて対策するのではなく、市にできる最大限の支援に努めているのがうかがえます。
実家のゴミ屋敷化を防ぐには生前整理もおすすめ
先に紹介しましたが、高齢化が原因でゴミ屋敷化することが増えてきています。特に、実家を出てしばらく規制していない人は注意が必要です。
ゴミ屋敷対策として親が自分でごみを片づけられなくなる前に、生前整理をしておくことをおすすめします。
親が亡くなってからゴミ屋敷と化した実家を清掃するのは、非常に体力を消耗しますし、相当な時間がかかります。
そもそも親が死亡すれば、通夜や葬式の手配や相続手続きなどに追われることになります。これに加えてゴミ屋敷を掃除するとなると、精神的・肉体的に大きな負担がかかることは誰でも想像できるでしょう。
したがって、親が実家の中にあるものの位置をきちんと覚えていて元気なうちから整理をしておくことが大切です。生前整理をすれば両親はきれいな家で生活ができますし、より活力のある人生を送れるでしょう。
また、話が理解できるうちに実家のゴミ屋敷対策をすることは、両親の理解を得られやすいメリットもあります。
兄弟や姉妹で協力してもなかなか実家が片付けられな場合は、ゴミ屋敷対策の専門業者や自治体に相談・依頼する方法もあります。
ゴミ屋敷の対策はできるだけ早めに行動することがポイントになるので、実家のものが多いと感じている人はスピーディな選択を意識しましょう。
まとめ:業者・自治体への相談などで適切に対策しよう
マンションや一軒家がゴミ屋敷になる原因は、非常にさまざまです。きちんとゴミ屋敷対策をするためには、原因を知った上で日ごろから注意することが重要なコツです。
自分の部屋や実家がゴミ屋敷になることを防止するためにも、今回紹介した内容を参考に適切な対策を取ってみてください。
もしも、隣家や自分の身の回りのゴミ屋敷に悩んでいるなら、専門業者や管轄の役所に相談して適切な対策をしてもらう方法もあります。
料金の相場はゴミ屋敷の状況によって大きく異なるので、まずは気軽な相談から検討してみるといいでしょう。